夜の帳が降りきらないうちに、俺の部屋へ一人の女がやって来た。
白い顔に鮮やかな赤い唇。
結いもせずに垂らした黒い髪が艶やか。
その双眸は知的な光を湛え、俺を引き付けてやまない。
白い衣を纏ったその女の肌は絹の様に滑らかで、俺はその感触をよく知っていた。
「殿、お帰りなさいませ。もうお眠りになられますか?」
少し小さめの口から紡ぎ出される声は高すぎず低すぎず、まるで何か楽曲のように、何の抵抗も無しに俺の耳へ届く。
「いや。・・・来い」
堅苦しい着物の帯を緩めて、寝台へ腰掛ける。
女は俺の言葉に大人しく従い、差し出された手に自分のそれを重ねた。
女が歩くと、長い黒髪がその肩を流れた。
まるで渇いた地を這う蛇の様に見えて、いつもその光景は女の妖艶さを演出した。
執念深く、ゾロリとその身体で敵を絡め取る蛇。
この乱世、魏に・・・俺に仕えるに、相応しい女。

この女が俺に仕えるようになってからまだ一月と経っていなかったが、俺はこの美しい女をなかなか気に入っていた。
女は静かに俺の足元に膝を付き、帯を取り去って、俺の物にゆっくりと舌を這わせた。
女の舌は、白く細い指と共に俺を攻める。
時間が経つにつれ猛ってゆく俺の熱の裏側を丁寧に舐め上げて、女はそのまま完全に咥え込んだ。
女の口に辛うじて収まった俺は、唾液と弱い息遣いに反応して、嬉しそうにのけぞった。

「く・・・」

苦しげに八の字になった柳眉、潤った瞳、紅潮しだした頬。
女の髪をわし掴んで、無理にこっちを向かせた。
男の物に直に触れ、尚且つそれを咥えて舐め回していたいかにも可愛らしい口は行き場を失って、開いたまま。
この上ない官能の情景を目の前に、これ以上我慢のきく男が居るとは思えない。
俗世を捨てたと言い張る仙人がもしいたとして、しかしこの女の前にそんな無欲な話は許されない。
足元の女を寝台へ乱暴に移動させ、衣を剥ぎ取った。
脱がされる為だけに身に纏った白い布は、そうされるのを待っていたように、簡単に女の肉体から滑り落ちた。
既に充分に水気を帯びている女の秘部をまさぐると、女は身体をびくりと震わせて、その口から小さく甘い、吐息の様な声を弾き出す。
男の物を平気で咥えるくせをしてこの敏感さ。
この勤めをこなすにはあまりに慣れていない女の感じるのが、小さな罪悪感を伴って危うい快感へ変わる。

・・・女の足を抱えて、穿った。
熱く湿ったそこは大して慣らすことなくとも、俺の物を受け入れた。
これでも始めの頃は痛みに身をよじり、涙を流して堪えていたものだ。
それを思うと、この女は随分と熟してきたと思える。
腰を動かすと、水っぽい音と熱い息遣いだけが部屋に響いた。
何故か嬌声を上げようとしないこの女は、くぐもった音をその喉から漏らしていた。
激しい前後運動を繰り返し、自らの快楽を貪る。
女のそれを気遣うことはしたことがない。
あるいはこの俺の強い動きが、女が喘がぬ理由なのかも知れなかった。
しかし俺の知ったことではない。
毎夜俺に抱かれることそれだけが、この女に与えられた唯一の、勤めなのだから。

「ッア」

・・・女が達する感覚が伝わった。
しかしそれも伝わったと言うだけで、俺の律動が止まるわけではない。
むしろそれは更に激しさを増し、達した直後で余計に敏感になっている女を容赦なく苛む。
ビクビクと痙攣した様に、波打つ様に動いて、女の内部は俺の物をシメ付けた。
そこを通じて、俺の身体中に例え様の無い快感が突き抜ける。
この女に対して我慢したことなど無かった。
俺はいつもそうしているように、女の中に欲望を吐き出した。


・・・双方にとって義務のようなその行為が終わると、俺は女を腕に抱いたまま眠る。
細くても女らしい柔らかな肉体は温かく、やはり人肌というのは安心出来た。
しかし女は俺が眠ったのをどう感じ取るのか、共に朝を迎えたのは、女が俺に与えられた日の一度きりだった。
今朝も変わらず、目を開けたその隣に、女の美しい肢体は見当たらない。
抱いた女の朝を見られないというのは少し損をした気分になる。
しかし女が、情事以外で俺の目に入ることは一度たりとてありはしなかった。
誰かにそうするよう命じられているかのように、女はいつの間にか姿をくらます。
女が俺の物を受け入れ、感じた挙句のけだるい朝を、俺の腕の中で迎える。
考えただけで高揚する。
いや、むしろあの美しい女が真実俺の所有物なのだと思いだすだけで、口許が緩んだ。
元はかなりの身分だったそうだが、盗賊に襲われて断絶した女の家。
その折に何か怪我でも負ったのか、女は子を成すことが出来ぬ体になったらしい。
・・・そのお陰で俺は、ありきたりの少年小姓ではなく、どれだけ精を注ぎ込んでも後腐れの無い、
しかも容姿家柄共に申し分ない専用の娼婦を得た。
良家の姫が、たかが一将軍に毎夜辱めを受ける。
あの女は今の自分を、自分を飽きもせず犯し続ける俺を、どれだけ悔しく思っているだろう。
女への興味は尽きない。
そういえば、名もまともに聞いたことが無かった。
・・・今夜抱く前にでも、聞いてみるとしよう。

あの美しい女の名を、心地良いあの声で、奏でさせたいと思った。









・・・これ絶対引かれる、よ、ね・・・orz
でっでも、あたしの中のトニーはこんなかんじです。
なんか病的(…
ビミョーに暗い感じになるかもしれないです。
でもハッピーエンドにするというのだけ決めている(笑)
まだ名前も呼ばれてないのにね